大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和40年(あ)1573号 判決 1966年4月08日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人木川恵章の上告趣意第一点は、憲法三六条、三八条二項違反をいうが、記録に徴するも、所論被告人の各供述調書に任意性を疑うべき点は認められないとした原審の判断は相当であるから、所論はその前提を欠き、その余は単なる法令違反の主張であって上告適法の理由とならない。

同第二点は、原審で主張判断を経ない事項に関し違憲違法をいうものであって上告適法の理由とならない(原審が是認した一審判決挙示の証拠によれば、同判決判示第一の強姦の事実についてその補強証拠は十分であると認められる)。

同第三点は、憲法三一条違反をいう点もあるが、実質はすべて単なる法令違反の主張であって、上告適法の理由とならない(被告人は、当初から財物を領得する意思は有していなかったが、野外において、人を殺害した後、領得の意思を生じ、右犯行直後、その現場において、被害者が身につけていた時計を奪取したのであって、このような場合には、被害者が生前有していた財物の所持はその死亡直後においてもなお継続して保護するのが法の目的にかなうものというべきである。そうすると、被害者からその財物の占有を離脱させた自己の行為を利用して右財物を奪取した一連の被告人の行為は、これを全体的に考察して、他人の財物に対する所持を侵害したものというべきであるから、右奪取行為は、占有離脱物横領ではなく、窃盗罪を構成するものと解するのが相当である)。

同第四点は、憲法三一条、三七条一項違反をいうが、所論上申書は、いかなる意味においても、本件において証拠となったものではないとした原審の判断は相当であるから、右論旨はその前提を欠き、その余は単なる法令違反の主張であって、上告適法の理由とならない。

同第五点および第六点は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であって、上告適法の理由とならない。

また、記録を調べても刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって、同四一四条、三九六条、一八一条一項但書により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例